金曜日はキライ。
「ほろちゃーんおはよー!日葵、ほろちゃんの髪の毛やってもい?」
ゆり菜ちゃんが笑顔でこっちに来た。志保梨ちゃんも一緒にいる。ふたりとも夏の暑さなんて全く関係ないみたいに明るくて元気だ。うらやましい。
「え、髪?」
「あっ日葵、あのね、髪を結んでもらうのお願いしてて…」
「あ、そうだったんだ。やってあげようと思ってたのにー」
「…ごめん」
先に言っておけばよかった。
「あやまることないよ。ゆり菜、かわいくしてあげてねー」
「まかせてよっ」
「おお、気合はいってる!」
「ほろちゃんかわいいんだもーん」
心臓がちょっと狭くなったような気分。
日葵はわたしに手を振って教室を出ていってしまった。なんとなくそのドアから目が離せないでいると志保梨ちゃんが「大丈夫かな」って聞いてきた。
「言いわすれちゃってたから…でも大丈夫、あとで話しておくね」
「ほろちゃんは愛されてるねえ」
志保梨ちゃんがちょっと苦笑気味で言う。わたしも、日葵のことが大好きだ。
「ポニーテールでいいよね」
「う、うん…似合わなかったらごめんね」
そんな元気っ子みたいな髪型したことない。似合う気がしないんだけどなあ…。
「似合うよ絶対!ほろちゃん顔小さいし首がすっきり長いし肩は華奢だしさ、絶対大丈夫!」
「わあ…ありがとう」
「よーし。志保梨、くし持ってる?」
「…自分で持ってきなよバカ」
やれやれと自分の席に取りに行ってくれる志保梨ちゃんの姿を追っていると常盤くんが廊下に出ていくのが見えた。
「……」
そわそわしてしまうのは、さっき日葵が出ていった方に行ったから。
気にすることない。そう言い聞かせる。
それに常盤くんがどこに行ったって、誰といたって、わたしには関係のないことだ。