金曜日はキライ。
過程は鏡を見せてもらえなかったからちょっと不安だった。代わりに「できた!」と大きな声で言ったと思えば手を引っ張られてトイレに連れてこられた。
「じゃーん!」
張り切ったゆり菜ちゃんの声に導かれるように鏡を見ると、顔周り一束おくれ毛を残してポニーテールが完成していた。髪飾りが赤色のお花のクリップで、とってもかわいい。
「わあ…ゆり菜ちゃんすごい、上手だね…!」
「へへ、やっぱり似合うでしょう?この髪飾りはプレゼントだよ!」
「ええっ、もらえないよ…!」
「いーからいーから、ね?」
いいのかなあ。明日クッキーとか焼いてこよう。
「ありがとう…うれしい」
「ほろちゃんは素直だなあ。なんだか恥ずかしいよ」
それにこの髪型なら涼しいや。これならきっと大丈夫。
夏の暑い日差しが窓から注がれる。夏は好きなんだから本当はもっと丈夫になりたいよ。
教室に戻ると日葵と常盤くんと千昂くんが話している姿が見えた。戻ってきたんだ、とほっとしていると「日葵〜ほろちゃんのおめかし終わりました!」とゆり菜ちゃんが大きな声で報告した。
「ちょ、あの…」
「こらゆり菜、ほろちゃん恥ずかしでしょー」
何も言っていないのに志保梨ちゃんは気づいてくれた。ゆり菜ちゃんはけらけら笑っていたけど悪気はないからなんか愛おしい。
でもクラスメイトに見られてる気恥しさにうつむきがちになってしまう。
気合入れてるとか、似合わないとか、思われたらどうしよう。せっかくやってくれたのに悪いよ…。
おそるおそる日葵の方を見ると、その奥にいる常盤くんと視線がぶつかった。
それだけで息をすることさえままならなくなるのに。
「雰囲気変わるね。でもすげー似合う」
「え……」
「……かわいい」