金曜日はキライ。


落ち込むわたしを見てけらけらとのんきに笑いはじめた。


「笑いごとじゃないもん…」

「ごめんごめん、でもほろちゃんがかわいくって」

「…さっきはフォローしてくれてありがとう」


きっと志保梨ちゃんがいなかったら泣いてたかもしれない。

心細かったけど、どこかで、志保梨ちゃんが気づいてくれたかもしれないって思ってた。


「ほろちゃんバッターだよー」


ゆり菜ちゃんが手招きする。常盤くんとの練習の成果を発揮して4番を任されてるからまわってくるのが早い。


「ほろちゃん」


立ち上がると呼び止められた。振り向くと優しい顔をした志保梨ちゃんがいた。


「期待してもいいと思うよ」

「え…」

「清雨はむやみに「かわいい」なんて言わないから」


じゃあきっと、よく褒めるからって言っていた日葵はかわいいって言われたことがあるんだね。

──── それならいっそう、期待なんてしちゃいけない。



「ほろちゃん打ってー!」


話しに夢中だったけど、ツーアウト1塁みたい。

もう半分のグラウンドでは常盤くんたちが試合をしてる。今は攻めみたいだ。

日葵もきっと体育館でがんばってるんだろう。


ピッチャーが投げる。ぐるんぐるんって2回まわす本格的な投げ方にどきりとして一球目を見逃してしまった。

うわあ、きっと経験者だ。とっても球が速い。

これ、1塁の子はよく打てたなあ。無理かもしれない。


なんて思っていると、男子の方からわあっと歓声が上がった。女子たちが一斉にそっちに視線を注ぐ。わたしも見ると、常盤くんがホームランを打った後だった。


「すごい…」


野球、本当に上手なのにどうしてやめちゃったんだろう。

『野球教えるの雨綸にだけだよ』

それくらい野球から離れてるのに、どうしてわたしに教えてくれたの。


がんばろう。

せっかく教えてもらったんだもの。


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