金曜日はキライ。


すれ違った恋が目の前にある。

今わたしの口から常盤くんのことを日葵に言えば、何かが変わるのかもしれない。それはもしかしたら常盤くんのためになってくれるのかもしれない。

でも、とてもじゃないけどそんなことできないよ。


その日、日葵に自分の気持ちを伝えることは結局できなかった。


きっと話したい事じゃなかったと思う。過去のことだし、今はもう千昂くんっていう彼氏がいて、常盤くんとは仲良しなお友達って関係を築いてる。

それなのに聞いたわたしに泣きそうな声で笑って話してくれたのに、わたしは何も言えなかった。自分のこと、言おうって思ってたのにどうして言えないんだろう。


常盤くんの誕生日石であるラブラドライトのブレスレットを握りしめる。


常盤くんのために何かしたい。

どんなことでもいい。ううん、できることなんて、指先でつついたらすぐに崩れるくらい脆くて、だけど壊れたことにも気づかないくらい些細で、目をこらさないと見えない小さいことしかないかもしれない。

そう思ってきたけど、わたしなんか、もうそれさえもできないかもしれない。

日に日にまっすぐからほど遠くなるこの感情が、常盤くんのために何かできるはずない。


……よろこんですら、もらえないよ、こんなんじゃ。


親友の日葵に秘密がいっぱいで、羨望も負い目もいっぱいで。

弓くんの気持ちに甘えていて。

常盤くんのことが大好きって気持ちから逃げ出してしまいたい。


こんな気持ち、誰にも言えない。

知られたくない。

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