金曜日はキライ。
やめちゃいたい。逃げ出したい。わたしが彼にできることなんて何もない。そんなもの必要ない。そう思うのに、あふれてくる。
「ははっ、露木だ」
常盤くんが笑った。わたしの名前を呼んだ。日葵よりも先に呼んだ。わたしのことを、見てくれた。くるしかったはずのものがそれだけで和らいでいく。
「ごめんな、待ち合わせ行けなくて…本当にごめん」
その言葉にぶんぶんと首を振る。それしかできない。
そんなわたしに、きみは優しい。
「はーよかった。朝から露木に会えて、空も晴れてて、新学期日和」
これから先もどうせきっと何回でも思わされる。
やめたい。逃げたい。誰かに寄りかかってしまいたい。だけどどうしてもそれができない。できたら楽なのに、できない。常盤くんのことを好きでよかった。
常盤くんの涙が落ちた先がわたしの頬でよかった。
「なあんかふたりとも仲良くなってるね?電話もしたみたいだしー」
日葵が覗き込んでくる。
その奥で千昂くんが「鈍感」って口パクしながら笑ってるのが見えてはずかしくなる。千昂くんにはバレてしまってて恥ずかしいなあ。
「清雨、わたしの親友とらないでね」
ああ、そんなこと言わなくていいのに。そんなつもり常盤くんには一切ないのに。
「露木は駒井の親友だろうけど駒井のモンじゃねーよ」
「ぬう…わかったような口でなにさ!」
「触んなばーか」
自分に向かってきた日葵の手からさりげなく抜け出して先を歩いていく。
…やっぱこういうのは、けっこうきついなあ…。
「ほろちゃん、気にすることないよ」
千昂くんに励まされたから笑ってみせる。
大丈夫、つらいのは、わたしだけじゃない。悲しんでなんかいられない。