金曜日はキライ。
朝日葵との会話でも出てきたように来月学園祭があるから今日の放課後は実行委員を決めることになった。
けれど誰もやりたがらないし一切の盛り上がりもなくシーンとしてる。
理由はひとつ。教室の中心にいつもいる常盤くんが今はいないからだ。それだけで教室の空気は一変してしまう。彼のすごさがよくわかる。
「清雨まだかなあ」
ゆり菜ちゃんの声が響いた。わたしだって気が気じゃない。
放課後がはじまる前、常盤くんは海野花澄ちゃんにまた呼び出された。きっともう一度告白しに来たんだと思う。
「かすみん、すごいなあ」
うん、そうだね。きっとみんなそう思ってる。
花澄ちゃんはわたしにできないことをやってのけた。それも2回。どれほどの勇気を振り絞って常盤くんの名前を呼んだか想像くらいできるよ。でも想像でしかない。
「かすみんのこと振るとか贅沢ものすぎんだよな!よし、清雨を実行委員にしようぜ!」
「えっ勝手に決めるの!?」
それはちょっと、ないよなあ。でもみんなだんだんとそんな空気になっていく。清雨ならやってくるかもしれないって思ってるんだと思う。
黒板に常盤、と書かれていく。
とっさに手を挙げた。イスから立ち上がる。クラスみんなの視線が突き刺さる。
「どうしたの茉幌」
日葵に呼ばれたけど、なんとなく反応できなかった。
「あ、の…わたしがやります…!」
自分がいない間に決まってたらいやだと思う。いくら常盤くんだって「押し付けられたのかな」って思ったりすると思う。
そういう気持ちになってほしくない。
だからわたしが代わりになるよ。
「えっ、茉幌できないでしょ!」
「できるもん…がんばる」
「じゃあ男子も女子も決まったな」
「へ、」