金曜日はキライ。


委員が集まる教室に入るとすぐに、つやつやの髪の毛が目に入った。その持ち主もこっちを見て、わたしの右隣にいる常盤くんを見て目をまあるくした。


花澄ちゃんだ。昨日はばっちりに巻いていた髪が今日はストレートで元気がない。

思わず隣を見上げると、同じように花澄ちゃんを見つけていて緊張した面持ちだった。


そのうちむこうがそっぽを向いてしまった。目を合わせていられないという、感情が手に取るように伝わってくる。


「後ろの方に座ろ」


そう言われて頷く。常盤くんは前の方に座ってる花澄ちゃんから離れた場所に座った。


小さな肩が震えてるのが、見える。

わたしと同じで常盤くんは目がいいから気づいてると思う。こっそり盗み見ると、どうにかしたいけど、自分じゃ何もできなくて…って悩んでいそうな表情を浮かべていた。

たまらず、席から立ち上がる。


花澄ちゃんのところまで歩いてハンカチを手渡した。大きな瞳からは涙があふれていた。


かっこいいなあ。

すごいなあ。

わたしだったらこの場から逃げてしまう気がする。それどころか気持ちすら伝えられない。


「あ…ありがと……っ」


両手じゃぬぐいきれない涙をこぼしながら受けとられた。

そんなこと言われる資格なんてない。

なのに席に戻ると常盤くんからも同じ言葉をもらった。首を横に振りながら、自分が本当にすべきことと、それをする勇気がない自分の弱さを、考えていた。

わたしに勇気さえあったら、あの姿はわたしだったかもしれない。


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