金曜日はキライ。
一番最初の委員会だったから自己紹介と注意事項の読み合わせ、それからクラスの出し物決めを宿題に出されて短い時間で終わった。
「ほろちゃん!」
常盤くんと並んで廊下に出るとすぐに声をかけられた。初めてその声に名前を呼ばれた。
「ハンカチ洗って返すね、ありがとう」
「あ、そのままで大丈夫だよ!こちらこそありがとう」
花澄ちゃんが真っ赤な目で微笑んで、それから赤いハンカチを返してくれた。深い気持ちの分の涙を含んだそれは重たくのしかかる。
あきらめられないって、2度目の告白をした。涙が溢れてきても逃げなかった。
「ほろちゃんも、清雨も!委員会よろしく!またね!」
返事を待たずに、さらりと髪をなびかせて走って行ってしまった。花澄ちゃんの教室、あっちじゃないのに。
無理して、それでも、がんばったんだ。
その背中を見送る。
常盤くんから笑顔は消えていた。いつも笑ってるのに、…つらいよね。
「髪がストレートだと、印象がちがうね」
気の利かないことを言ってしまったとすぐに後悔した。
「うん。よくあんな伸ばせるよな」
それなのに話を続けてくれるきみがいじらしい。
大丈夫だよ、無理しないで。ごめんね。
「かっこいいなあ。わたしも、誰にでも誠実でまっすぐでいたいんだけど…むずかしいなって思う。なかなかできなくてくやしい」
想いを伝える。
人を想う。
それは日葵や弓くんや花澄ちゃん、千昂くんや志保梨ちゃん。みんなと同じなはずなのにわたしとは全然違う。
遠く果てしない。
まっすぐになれない。
今隣にいる人のことを笑顔にしたいのに。
つらいならつらいって吐き出してもらいたいのに。
それが何よりもむずかしくて、悲しい。情けない。くやしい。