金曜日はキライ。
でもなんかなあ。ちょっとにらむように見ると頭をなでられた。
待って、そんなことされたら心臓が破裂しそう。どうしよう、どうして。
「ありがとう」
もう片方の手のひらがラブラドライトをそっと受けとった。大事そうに左手首を輪っかに通す。
その行動ひとつひとつに泣きそうになる。手が震えてる。気持ちが溢れそうになる。それを留めておくのに必死でくるしい。
「露木がするにしては緩そうだなって思ってたんだよね。駒井は自分にぴったりサイズの付けてたし」
「…っ」
「…もしかして最初からおれにくれようとしてた?」
常盤くんの腕にぴったりなメンズサイズ。
きみとわたしのちがいが、こんなにも胸をくすぐるのは初めてだ。
「あ、の」
はずかしい、バレていたなんて。
「照れすぎじゃない?なあ、本当におれのためだった?」
声が震えそうだったから必死にうなずいた。
誤魔化したくなかった。
「露木、おれも誕生日に渡したかったものが…」
「茉幌!」
常盤くん、できればもう少しだけ話していたかった。
なんて願ってばっかりで何もできない。
「委員会終わった?ねえゆり菜から聞いたんだけど駅前にクレープワゴン来てるんだって!行こ!」
「日葵、」
日葵と食べるクレープ。
歴代彼氏とは食べずにわたしを優先してくれる日葵。
大好きな日葵。
いっぱい助けてくれた日葵。
それでも今は常盤くんへの気持ちが一番大切だった。
「うん、行きたい」
「よし!じゃあ清雨、また明日ね」
「おー。楽しんでな」
一刻も早く日葵を連れてここから離れたい。
さっきまでの笑顔が心からのものじゃないことを実感してしまうから。きっとわたしじゃだめなんだって、わかってしまうから。