金曜日はキライ。
背中がぽんと優しいちからでたたかれる。
「あちゃちゃー、弓くんおこっちゃったね。でもダイジョーブダイジョーブ、弓くんだもん。けっきょくまほちゃんにはいつも甘いからすぐ機嫌もなおるって」
「りくちゃん……それじゃだめなの」
弓くんのように誰に対しても誠実なひとでいたいのに、いつもそこから遠ざかってしまう。
弱いから。彼のように真っ直ぐになる方法がまだ、わからないから。
コック帽を拾い上げる。
「わたし…弓くんにだけはかっこわるいって思われたくないの。いつもそんな姿見せてばっかりだけど、これ以上ダメなやつだって思われたくないの…」
「えええ、まほちゃんってけっこう強い子だと思うよ!?」
「ごめんりくちゃん、店番代わって!」
「へ、わたし他校生だし無理じゃ……って、まほちゃん!?」
泣き出しそうな日葵を置いて、常盤くんも見ているはずの中、弓くんを追いかけるために教室から飛び出した。
出会った時から弓くんはああいう子だった。他人に厳しくって、だけどその分自分でもがんばっていて、強くて。
わたしに無いものをたくさん持ってる。
それが欲しかった。
弓くんといれば、自然といつの日かああいうひとになれてるんじゃないかって思ってしまった。
そんなわけない。
自分が変わらないと、なれっこない。
弓くんはもう学校の外に出て行ってしまっていた。なんとなくそんな気がしてた。
桜の木の横を通り過ぎて門を出るとすぐに黒い背中があった。そこに向かって思わず叫ぶ。
「弓くん、待って、ちがうの!」
ちがうんだよ。
間違った解釈をさせちゃうくらいきみのこと心配させてたんだなって思った。