金曜日はキライ。


「足速ぇーよ。コワ」

「なっ…それはさすがにひどい!」


ちがうの、の続きを話すよりも弓くんへの反撃を優先してしまった。そんなわたしをくくくっとおかしそうに笑ってる。

歩くのをやめてくれた。わたしが追いつく前に一歩だけだけどこっちに向かってきてくれた。

りくちゃんの言うとおり、甘い。優しい。



「弓くんにわたしの大好きな人の話をしたいんだけどいいかなあ」



そう問いかけると「聞きたくないって言ってもするんだろ。頑固なヤツ」なんて憎まれ口を言われた。甘いんだか厳しいんだか。

隅っこにしゃがみ込んだ弓くんの近くにわたしは正座した。アスファルトは痛いけど我慢だよ。


「勘違いしないでね。今から世界一大好きな女の子の話をします。弓くんにちゃんと紹介します」


ちがうんだよ。わたしだけの親友なんだってまわりに叫びたいくらいなのはわたしのほうだった。


「…勝手にどーぞ」

「うん。まずね、わたしは小さいころから今みたいな性格だった。引っ込み思案で人に話しかけるのが苦手で、話しかけられてもうまくしゃべれないようなやつだった。そんなわたしのこと、日葵だけはゆるしてくれた。めげずに話しかけてくれて、引っ張ってくれて、楽しませてくれたの」


日葵とわたしは小さいころから正反対だった。


「日葵にはわたしとちがってたくさん友達がいたから、不安だった。いつかいなくなっちゃうんじゃないかって。いつかわたしより仲良しな人ができちゃうんだろうって。そう思うとこわかったけど…授業である言葉を習って、その言葉を使うようになってから、不安がまぎれるようになった」



“親友”っていう言葉。

わたしの、たったひとり。だから日葵のたったひとりになるために必死だった。

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