金曜日はキライ。


まぶたの裏がじんわりと熱くなる。

鼻の奥が重たい。


泣きそうだ。だけど泣きたくない。



「日葵のことが大好きなのに……言えないことがつらい………」



何回も話そうとした。できなかった。

わたしが話したら、あのふたりはもう二度と、報われることはないから。

常盤くんの気持ちを日葵は受け入れられなくなってしまうから。


「おまえの親友がイイヤツだってことくらいはじめっからわかってんだよ」


弓くんの指先が、わたしの鼻の頭を撫でた。


「おまえが親友のことすげー好きだってこともわかってる。人の好意ナメんな」

「う…」


「でも俺には茉幌が何に悩んでんのかわかんないんだよ。だから見てると苛々する。茉幌の悩みはちょっとのことで解決するもんなんじゃないのかよ。本当の本当に、そんな泣きそうになるまで考え込むようなことなのかよ。そうは思えないんだよ」


弓くんにそう言われて考えてみる。

自分の気持ちを優先して日葵に話せばいいのかもしれない。日葵にだって今はもう千昂くんがいる。


けれど、やっぱり常盤くんの気持ちもあるから、言えないって思っちゃうんだ。

わたしのせいで常盤くんが傷つくことだけは絶対に嫌なんだ。


そんな話まで弓くんはうんうんって聞いてくれる。人が良いにも程があるよ。


「ばっかじゃねえの」

「バッ…」


前言撤回したい!鼻で笑うなんて!


「トキワの気持ち、聞いてないんだろ?ただの憶測に振り回されてんなよ。トキワがヒマリをまだ好きだとかはおまえの妄想かもしれねえだろ」

「妄想って…そうだって思うことがなかったらこんなに悩まないよ」

「それでも聞いてみないとわかんないだろ。勇気いることかもしれないけど、切り捨てらんないならそのくらいがんばってみれば」


それもそうかもしれない。

…なんて思わせてくるからすごいや。


< 201 / 253 >

この作品をシェア

pagetop