金曜日はキライ。
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日葵にあやまりたかったけど、途中で委員に呼ばるたりりくちゃんとまわったりしていたからすっかり放課後になってしまった。
最後に和央先生にまた雑用を頼まれたから…今日はぜんぜん教室にいられなかったなあ。
少しは断ることもしたいけど、頼られたらまっとうしたくなる。りくちゃんも手伝ってくれたけど申し訳なかった。
校内ももう静か。
あんなに騒がしかったのに。イベント期間は部活もないから早く帰らないとけっこう怒られる。わたしも見つからないようにしなくちゃ。和央先生のせいだけど。
着替えて足速に廊下を歩いていると雨の音が聞こえた。降るなんて聞いてない。
窓の外を見ようとした。だけどその前に無視できない人を見つけてしまった。
気づけばあの窓の前。あの日きみと目が合った場所。ただの偶然?
正門までの道と、あの桜の木と、それから町の夕焼け空。降りはじめた雨。それらをぼうっと見ているような──── 常盤くんの横顔。
「常盤くん…帰らないと怒られちゃうよ」
自分でも嘲笑わらっちゃいそうなくらい声が震えた。
呼びかけに応えるみたいにゆっくりとこっちを向いて、笑みをこぼす。
「露木もね。雨降ってきたよ。あっちのほうは晴れてるからすぐ止みそうだけど」
「ねえ……無理に笑わなくて、いいよ」
雨なんかどうでもいい。あっちは晴れてるとかも、ピンク色じゃない桜の木も、下校時刻も、どうでもいい。
本当はそれらを見ていたわけじゃない。
下から聞こえてくる楽しそうな男女の声。急な雨に濡れないように千昂くんのブレザーにふたりで身を隠しながら駆けていく。
わたしは、きみの涙を知ってるよ。
「…あいつら、本当似合ってるよな」
「……っ」
嫉妬とか、羨望とか、計り知れない気持ちだってたくさんあるはずなのに
常盤くんの笑顔を、この時初めて見た。