金曜日はキライ。


常盤くんの制服が涙で濡れるかもしれない。離れるべきなのかもしれない。だけど離れたくない。

誰と間違えたわけでもないこの行動に何の理由があるのかもわからないけど、鼓動の音までもいとしい。


「もう泣いたから。1年の梅雨がはじまる頃…露木に見つかったとき」


狐の嫁入りがあがって、虹がかかった日。


「あれで充分」

「じゃあ、どうして好きだった日葵を千昂くんに紹介なんてしちゃったの…?聞いてもいい?」



腕のちからが緩んだのを感じた。もう、この時間はおしまい。

一歩離れると困ったような笑みが落ちてきた。

わたしも勇気を出して聞いたよ。だから答えてほしい。つらくても情けなくてもなんでもいいから、きみの心の中のこと。


「話したいから…場所移動してもいい?」

「あ!そうだよね、見つかったらおこられちゃう…!」

「それもだけど、野球の練習した河川敷で話したくて」

「…行きたい」


行ったことのあるその場所はきっと大事な場所なんだろう。そんな言い方だった。


下駄箱まで並んで歩いたのは初めてだ。


「あ、雨…」

「わすれてた、あがんないかな」

「あの…折りたたみなら持ってるんだけど…ひとつだけ…」


いやいや、むりだよ。むりでしょ、自分。


「じゃあ露木だけ入って、おれはかばんを傘にする」

「や、えっと!常盤くんさえよければ…一緒に…せまいけど!」


むりだけど、でも、風邪ひいたら困る。かばんを傘にするなんてもっとむり。

心臓がばくばくしてる。

震えそうな手で傘を差し出す。折りたたみも赤い傘。

< 205 / 253 >

この作品をシェア

pagetop