金曜日はキライ。


ちいさい頃から人付き合いが苦手だった。人に何かを頼まれることが多いのは、力のない弱い人だと思われてるからだって思ってた。だから自分の気持ちを言えなかった。そんな自分がきらいだった。


そんなわたしをゆるしてくれたのは日葵が一番最初だった。つまんないわたしと一緒にいてもたくさん笑ってくれる人。

日葵にはわたし以外にも友達がいた。彼氏だっている。それがいやだった。…うらやましかった、ずっと。わたしにできないことがうまくできるところ、いいなあって思ってきた。



「物心つく前から好きだったことがあったんだ。小学校上がるころから」


細かな雨のように常盤くんは話しはじめた。


「でもおれの後から始めたやつの方がうまくなってきてさ。気づけばそれをやるのが嫌になってた」


野球だとは言わない。

でもここに連れてきてくれたことが物語る。


「プライドが高いのかね。くだらないよなあ」

「そんなことない。そんなことないよ」


だから自分のことを責めないでほしい。誰にだって受け入れられないことくらいある。逃げ出したくなることも、本当に逃げ出してしまうこともある。わたしにだってたくさんある。常盤くんへの気持ちだってそう。逃げられるのなら逃げてしまいたい。


「そのくせ、自分で選んだ事なのに諦めたことを後悔することが時々ある。駒井のことは…ただ自信なくて、だったら自分が傷つく前にって、そんな気持ちで紹介した」


そんなことないっていう本心は、常盤くんには届かないのかもしれない。

後悔ってそう消えない。


「後悔するくらい常盤くんにとって大切なものだったんだね。けど、大切な人を大事にしていくことを選んだんだね」


なんとなくだけどわかるんだよ。なんでかなあ。


「…なんで、露木って、言ってほしいこと言ってくれるの」

「わかんないけど、きっと、……」


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