金曜日はキライ。
常盤くんが野球をやっていたって知ったときからずっと、ユニホーム姿が見れなかったことが残念だった。見たいと思っていた。だってぜったいに似合うから。
「持ってないから買った」
「はは!清雨野球うまいもんなー!」
クラスメイトに肩を組まれて楽しそうに笑っている。
ねえ常盤くん、見せてくれてありがとう。なんて勝手にお礼を言いたくなるくらい感動してる。見る機会ないだろうなって諦めてたから。同じ小学校と中学に通いたかったなって思ってたんだよ。
同じ学校だったら、野球うまいねって、すごいねって、かっこいいねって…言えるかわかんないけど、夢にむかってがんばってねって、言いたかったな。
きみがやめないで済むように。
きみが負い目を感じないで済むように。
常盤くんがかなしむ顔見たくないの。
どうにかして笑っていてほしいの。
「昨日は夢なんてわすれたって言ってたのにな〜。思い出したんだ?」
常盤くんは強くない。でも強く見せたがりで、かっこつけたがりで、本当にかっこよくなってしまうから困ったひとだよ。
クラスメイトに囲まれている野球帽を片隅で見ていると、そっと目が合った。
確かに目が合った。
呼吸がおかしくなりそうなくらい、心臓が弾んでいる。
こんなふうになるのは、彼だけ。
「昨日ある子と話してたら」
「…っ」
「夢見てたこと、思い出した」
逃げたくなることもやめたくなることも、くるしいこともたくさんあったけど。
やっぱりって思った。
やっぱり常盤くんのことを好きになれてよかったなあって、思えた。