金曜日はキライ。


話を引き戻せたのはわたしだけだったのに。日葵は気をつかってくれただけ。そこに甘えてしまった。これじゃいつもと何も変わらない。


それじゃだめだって弓くんが言ってる。


「…どうしたの急に」

「ううん。あのね、今はまだ言えないんだけど…きっとぜったいに話すから待っててほしいの。…ごめん」


いつになったら言えるのかな。

いつになったら勇気が出るのかな。


聞きたい。知りたい。伝えたい。でもこわいなんて、呆れちゃう。

恋ってむずかしくて、苦手。


「わかった、待ってる。でもわたし嫉妬深いから、悩むならこっそり人に相談してね」


ぷうっと頬を膨らませて言う、かわいい親友。

甘えは健在だけど、これでもう、確かめることから逃げられない。


常盤くんの涙。すがるような腕。背景の淡い桃色の花びら ────…


ずっとくるしかったのは常盤くんだ。


よくわかってしまう。わたしも、今まで何度も親友である日葵のことをうらやましいと思った。いいなあって、ああいうふうになりたいなあって…時にはどうして日葵だけ…って思うこともあった。

自分にないものを持っている。自分にできないことができる。

そういうのって眩しくて、その光が自分を引っ張り上げてくれることもあれば、奥底に沈めてくることもある。


そういう思いだったんだと思う。野球をやめたときも、日葵を紹介したときも。

だけどね、常盤くんもわたしも気づいてる。

どんなに眩しくても、それでもその子と一緒にいたいって願ってしまう自分のこと。


羨む自分を知られてきらわれるのがこわかったりすること。

大好きだってこと。


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