金曜日はキライ。


だけどやっぱり淋しいよ。


「でも気持ちはわかるよ。わたしも弓くんがやめちゃうの淋しいもん。あー癒しがなくなっちゃう!」

「……」


弓くんのことは淋しい、だけじゃない。

もっとちがう、ずるくて汚い、弓くんに対して思うにはふさわしくないことをわたしは思ってしまってる。


「おれが何?」

「わ、弓くん!うわー話聞いてた!?」


わ、弓くんだ。まかないを持ってきてくれたみたい。お皿をふたつ持ってきてくれた。

そのうえにのっかてるのはグラタン。まかないなのに今日も豪華だ。


「おれがいなくなると癒しがなくなるんだっけ、りく」

「うーわあ!はずかしい!わすれて!」

「はずかしがるとかきもい」

「きもいって!ちょっとまほちゃん聞きました!?」


聞いたけど、全然気持ちわるがってなかったよ。弓くんはかわいいなあ。


「グラタンおいしそう。弓くんが作ったの?」

「店長だよ」


店長のグラタンはもっと焦げ目がついてるもんね。

わかる嘘をつく。照れ屋さん。かわいくて優しくて、誠実だけど照れ隠しをするからまたかわいい。

そんな年下の男の子は……



「おまえは?」

「へ、」

「おれがいないと癒しがなくなるとか、淋しいとか、ないわけ?」



覗き込むように聞いてくるから椅子から転げ落ちそうになる。それを「あぶね」って支えてくるから、焦る。危ないの弓くんのせいじゃんか。


「お、思わないもん」

「へえ。嘘下手だな」


にいっと笑う。りくちゃんがそこに携帯を向けたのが視界の片隅に映る。弓くんは気づいてないけど無音カメラに違いない。


「なによう…自意識過剰っ」

「はあ?茉幌、生意気」


生意気はどっちだ!ばか。ばか。何にも思わないわけないじゃない。それどころか、思いすぎて、とてもじゃないけど伝えられないよ。


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