金曜日はキライ。
「意外だね」
「意外…?」
「それってなんか、可哀そうだから好きになったみたい」
心臓が止まるかと思った。
「言い訳してるみたい」
言い訳って、何。親友が好きだった人を好きになっちゃったその言い訳?わかんない。自分でもよくわかんないんだよ。ううん、本当はわからないふりをしてるだけかもしれない。
日葵の好きだった人なんて好きになりたくなかった。
日葵のこと好きだった人なんて好きになりたくなかった。
敵うわけない。みじめなだけ。よけい日葵のことがうらやましくなっちゃうだけ。そんな感情を回避できたならとっくにしていた。涙を見ただけで好きになるとか、そんなの、絶対なかった。
だけど、奇跡だったんだ。
ちっぽけなわたしの日常の中に突然飛び込んできた、唯一の運命だと思ったんだ。
「本当に、ただ悲しい顔を見たから好きになった?」
視界がかすんでいく。
泣きそうだ。
常盤くんのこと、わたし、本当は…
本当は自分の、こんな叶いっこない気持ちなんて見たくなくて。
「本当に、雨がやんでなかったら、好きになってなかったの?」
「志保梨ちゃん…それ以上、言わないで」
「いやだよ。だって、ほろちゃんの気持ち、ほろちゃんが誤魔化しても、誰か知っててあげないとかわいそうだよ…」
「…ふっ、うう」
「うん。そうして泣いてていいから、教えて。ほろちゃん」
大好きだった。
──── あの雨上がりの日よりも前から、きっと。
初めての感情で自分でもよくわからないまま、この気持ちのはじまっていた。
「ほんとうはね」
「うん」
「雨がやまなくたって、常盤くんに好きな人がいたとかいるとかいないとか、関係なくて…」
関係ない。だって、わたしは
「もっと前から、高校生になったばかりのころから、好きだったから」
あれは入学式だった。