金曜日はキライ。


今思い返してみると、これは日葵のことだったのかなって思う。

日葵も常盤くんも、つらくなるほど似ているから。


「ここさあ、今の時期は綺麗だけど、芋虫の時期になったら最悪じゃね?おれチャリ通予定なんだけど」

「芋虫じゃなくて毛虫だよ」

「変わんないよ」


うーん。そのしかめ面、虫嫌いなのが伝わってくる。表情は素直だなあ。


「わたしは、秋のほうがいやだなあ。落ち葉って淋しい気がして」

「淋しがりだ?」

「ちがうよ」

「ふうん。じゃあ、秋になったら会いにいこうかな」

「え?」

「名前と、学年とクラスは?あ、ナンパじゃないから」

「思ってないよ」

「いや、そこ思っていいんだけど」


え、どっち?

へんてこな会話。だけど楽しかった。そんな不思議な空気をまとう人に初めて出会った。

吸い込まれるように自分の苗字とクラスをつぶやいた。


「ツユキさんね。よし覚えた。それじゃあ、また」



また ────

人見知りをしてしまうわたしが、なんの警戒心もなく話せた、最初の人。



「へー!とってもいい雰囲気の人だったんだね。自分の名前教えといて相手の聞かないところが茉幌らしいけど」

「日葵、わたしもそう思う…聞けなかった」

「でもなんかさ、桃色を背景にしてロマンチックな出会いだねえ。いいねえ」


彼との出来事を日葵に話すと、そんな感想をもらった。


「ちょっと、ねえ、変な風に思わないで」

「え、なに??ラブなラブがはじまるかも~って思うことがどうして変なことなんですかー」


これは完全に、茶化しにきてる。


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