金曜日はキライ。
不安を取り除いてくれたのはいつも弓くんだったなあって思う。
いつまで経っても慣れないバイトも弓くんが入ってきてからは行きたくないって思ったことなかった。バイト先の人とでかけてボーリングとかするのも楽しくなった。勝負するの楽しかった。かけてくれた言葉全部が、わたしのためのものなんだなって思えて、すごく心地がよかった。
それが甘えだってことも気づいてたけど、どうしても手放すことがこわかった。今だってそう。
だけどこのままじゃ、一番なりたい自分から遠ざかっていく。
誠実になりたい。
そう思わせてくれた人なのに、大事にできてない。
バイトの後弓くんを待つ。送ってもらうのに「悪いなあ」って気分にならなくなっていることがこわい。
帰り道の星空が好きだった。
夜に溶けそうなくらいの黒い髪を自転車の荷台に座りながらながめるのも、好きだった。
このままでいれたらいいのに。
こういう瞬間まで、そんなことを思ってしまう。
「お待たせ」
そういえば決まっていつも弓くんの方が上がるのが遅かったなあ。それだけ頼ってるなら店長ももっと引き留めてくれればいいのに。
自転車を出してサドルに座る。その一連の流れをぼんやり見つめていると「早く乗れよ」なんて言われる。生意気くん。
「今日も、よろしくお願いします」
「ん。そういえば指へーき?」
「あ、うん!ありがとうね!」
荷台に座って、絆創膏を貼った指を見せる。するとその手を取られて腰にまわされた。
「弓くんはもっとごはんを食べた方がいいよ」
「心配されなくても食ってるよ」
細いもん。でもかっちりしていて、ちゃんと男の子。
何回も何回も守ってくれた。