金曜日はキライ。
わたしは、絶対に、この恋を持ったまま常盤くんと友達になんてなれない。
「本当は聴きたくねえけど…本当のこと言えよ。仕方ないから全部聴いてやる」
「ほんとう、だよ」
「いつも頑固なくせにおまえらしくねえよ。どんな自分からも逃げんじゃねえ。俺をフりたいなら、向き合えよ、自分と」
わたしらしさなんてわかんない。
むしろこれがわたしらしいとさえ思うのに、きみはちがうの。
自分の中の気持ちなんて、到底言えない。言いたくない。…きっと、大嫌いよりずっと、ひどい。
首を横に振ると、弓くんは泣きそうな顔をした。
「だったら…きらいなやつのために泣くな」
弓くんはどうして、こんなわたしに優しくしてくれるんだろう。
なんて、今まで何度も聞いたけど、そのたび答えは同じだった。
「なあ、俺はちゃんと茉幌の気持ちを聴いて受け止めたい」
わたしは本当に、本当にうれしかったんだよ。
「弓、くん」
「……」
「弓くん」
涙をぬぐってくれる手を思わず握る。
「…なんだよ」
ひどいこと、言うね。
どんなわたしでも、いいんだよね。
いいって、言ってくれたよね。
…ごめんね。
「弓くんのこと、好きだよ…」
生意気で、口がわるくて、負けず嫌いで悔しがりで、ぶっきらぼうで、ばかとかあほとかすぐに言うし、偉そうだし、わたしのこと弱いってたぶん思ってる。
「好き…きらいなんか、思えない」
「……」
そういうところが、大好きで、大事にしたかった。だけどこのままじゃどんどん大事にできなくなっていく。
誠実なところ、真似したいの。うまくできなくてもきみみたいになってみたい。
「すごく好きだけど、でも、それはちがくて……ほかにもっと…っ」
「うん」
握った手は、握り返してくれた。