金曜日はキライ。



言われたらこっちも言わなきゃいけない雰囲気になる。わたしはそれに弱い。


「…誠実だなあって思ってる」

「セージツ?」

「誰にでも何にでも真っ直ぐで、まごころを持ってるというか…とにかく!かっこいいよ、そういうところ」


好きなことにもきらいなことにも真っ直ぐで、いいこともわるいことも指摘してくれる。自分を偽ったりしない。



「憧れで、弓くんみたいになりたいの」

「…あっそ」


「ふふ。照れ屋さんだねえ」

「うるせーよ。年上ぶんな」



ぶるよ、年上だもん。


誰かみたいになりたいって、そんなふうに思ったの初めてだよ。

日葵へのコンプレックスとかもどうでもよくなった。わたしはわたしなんだって思えた。そういうの、ぜんぶ弓くんのおかげだった。


ブルゾンのポケットから小さなラッピング袋を取り出す。きっとバイトの後はみんなに囲まれちゃって渡せそうにないから、今渡そう。


「なにそれ」

「明日、10月6日だから。弓くんの誕生日」

「プレゼント?」

「うん」


無神経なことしてるかもしれないけど、どうしてもあげたかった。

差し出したそれを大きな手のひらが受け取ったのを見てほっとする。よかった。


「ふーん。開けていい?」

「えっ…あ、今?」

「今」

「やだかも…」

「無理。もう俺のだから好きにする」


ああっ…封が開けられてしまった。いやだって言ったのに。はじめから開けるつもりなら聞かなくたっていいじゃないか。


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