金曜日はキライ。
「どうして、」
わたしは、また夢を、みているのかな。
「…おれは確かに駒井のことが好きだったよ。千昂に会わせたことも、ふたりを引き合わせたことも、何回も後悔した。正直に言うと、今はしてないのかって聞かれたらうまく答えられる自信ない。
けど、最近は幸せそうな二人を見てほっとするようになった。だからおれ、あの日・・・心臓がおれに教えてくれてたんじゃないかって思う」
よく、わからない。
でも、常盤くんは今、ものすごく何かを伝えようとしてくれている。
だから、言葉のつづきを待つ。
「あの日は、朝から風が強くて。なんか勘違いして傘をもってたんだけど、けっきょくいい天気で。ただ学校の前に咲いてるあの桜が全部散るんじゃないかってくらいだったから入学式ギリギリだったけど見に行ったんだ。
そうしたら、露木がいた。
花の嵐を目を細めて見上げてた。雨が降ってるとき、小雨だったらこの子は傘とか差さないんだろうなって、それが露木のはじめの印象だった。
桜が雨に見えたんだ。
気づいたら持ってきてた傘を露木の上に差してた。すぐに、なにやってんだろうって仕舞ったけどさ。傘を持ってたの、あのためだったんじゃないかってくらい自然にしてた。
あのとき露木が言ってくれたことがわすれられない。「人の気持ちが、わかるんだね。すごい」って、おれが自分の欠点だと思ってることに対しての言葉だったから、すげーうれしかった。これはおれにとって大切で特別な出会いになるって、きっと千昂と駒井のことはすぐに大丈夫になるって、心臓が教えてくるみたいに震えてた。
なあ、露木はこれを覚えてないんだと思う。2回目に会ったときははじめましてって目すら合わせてくれないし、人見知りだって駒井はいうけど、いつまでもおれには慣れてくれないし。でも同時期に出会ってるはずの千昂とは話してるし、なんなんだよ。ちょっと、いい加減拗ねそうなんだけど…」
長い、長い、まとまりのない話。最後は不満を言われてしまったけど、言われても仕方ない。