金曜日はキライ。
髪の毛を伸ばしていてよかった。視界がせまくてなんだか安心する。
からだが火照っていて、制服のひんやり冷たい感じに今一番助けられている。
背中で聴く、吹奏楽部が奏でるアヴェマリア。
運動部の活気のある声。
調理部が焼くお菓子のにおい。暖かい日差し。
「好きって、露木がおれのこと…?」
疑いを込めたような声色でそう尋ねてくるから、ウンウン首が痛むくらいにうなずいた。
「日葵のお友達が常盤くんだったから、会ったことあるよねって言えなくなった」
「ええ…なんでだよ」
「気になる人に好きな人がいるなら…無理だって思っちゃったんだ」
言えた。こんな勇気が自分にあるなんて思ってなかった。
「それに常盤くんが泣いてるところも見ちゃったし…」
「あ…あれは」
「でもあのときにもう自分の気持ちは誤魔化せないって思った。この人のことが好きなんだって気づいた。そう認めちゃったの。もうひとりで、泣かないでほしい。もっと笑ってほしい。そのためなら…なんでもしたいって」
まだ伝えたいことがある。知ってほしいことがある。受けとめてくれたらうれしい。なんて、よくばりかな。
「でもうまくできなくて…それでも、少しでも常盤くんのこころを助けられたらって…」
たいしたことはできてない。自分ですらよくわかんない。だけど常盤くんがいつもうれしいって言ってくれた。
好きになれて本当によかった。
おかげでがんばれてる自分に気づけたんだ。
「今はまだちがう気持ちでもいい」
「…」
「もう日葵のことは好きじゃないなら、いつか同じ気持ちになれるようにがんばってもいいかなあ…」
もっと、近づきたい。
幸せだって言ってもらいたい。
「…もう少し、待ってて、ほしい」
「っ、うん」
「今度こそおれから言うから」
「わたしは、がんばる」
頬を撫でられた。ずるいね、常盤くん。
だけど好きなの。
大好き。