金曜日はキライ。



°


昨日の夜中から降り続いてた雨がやんで空に虹がかかったのは、ちょうど下駄箱でうわばきから靴に履きかえている時だった。


「見て茉幌!虹だよっ」


いつもより高い日葵の声に顔をあげる。


「わあ、しかもふたつ並んでる!」

「すごーい!双子だー!」


わあわあ騒ぎぴょんぴょん跳ねながら外に出る親友のあとに続く。転ばないように見張っておこう。


「クレープクレープ!」


腕を組まれる。ブレスレットが太陽のひかりに反射していてきれい。

わたしは用意していた折りたたみ傘をかばんにしまって、頭の中で、昨日必死に考えて作った台本を読んだ。


……大切な、大好きな、親友。

誠実に、向き合いたい。うそとかもうつかなくていいってわかったから、自分が逃げるための言い訳とかも必要ない。



駅前のお気に入りのクレープ屋さん。

日葵はツナハム。わたしはイチゴカスタードクリーム。それにふたりで半分こにするMサイズの無糖アイスティーを頼んで一番奥の席に座った。今日は日葵がソファ席。


だけどアイスティーは数分でなくなってしまった。クレープは喉を通らないっていうのに全部飲み干してしまった…!



「もう、さっきから茉幌変だよ?アイスティーもうひとつ買ってくる…」

「ああっ待って日葵!落ちついて!」

「落ちついてはこっちのセリフだよっ」


引き留めてしまった。だって今、やっと今話そうとしてたのにいなくなろうとするから…!

落ちついて、わたし。日葵の言うとおり、落ちついて。


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