金曜日はキライ。
スウはあスウはあ、と本格的な深呼吸をはじめたわたしを本気で心配そうに見てくる日葵に、とりあえずへらりと笑ってみせる。
大丈夫、大丈夫だよ。ごめんね。
「もしかして話そうとしてくれてる?ずっと、茉幌がひみつにしてること」
ああまた!台本にないことを!これじゃまともに話せる気がしない。
親友は容赦ない。そりゃ散々待たせたもんね。それに今もさぞかしもどかしい気持ちなんだろう。
ひみつ。
わたしのひみつ。
「…うん、話していいかな…」
「どうぞ。いくらでも聞きますよ」
「うまく話せる自信がないんだけど…それでもいい?」
「いいよ。へたくそでも茉幌の話なら」
「……キライにならない?」
先にこんなこと聞いちゃうのは、ずるいよね。こういうところを直したいかもしれない。
でも日葵は、にっこり笑った。日葵にきらわれたらどうしよう生きていけないって思っていて、悩んで不安げなわたしを見て、すごくすごくうれしそうに笑ってる。満足そう。
「キライになんてなるわけないよ。茉幌のことが好きだって気持ちだけは誰にも負けないって本気で思ってるから」
わたしだってそうだよ。どんな日葵でも、日葵がたとえわたしをキライになったって大好きだよ。
もしも今からする話で何かが変わっても、わたしは日葵を追いかけるよ。
今まで、ないしょにしていてごめんね。
「あの、じつはわたし……常盤くんのことが、大好きなの。その話を今からするね」
こころの中にあった霧が、晴れていく。
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