金曜日はキライ。
うん、そこは、よく知ってる。きみの優しさは淋しいかたちをしているよね。
そんなきみだから魔法をかけたかったけど、ほら、わたしにはやっぱりそんな特別なチカラはないみたい。残念だよ。
だからわたしは、今度こそ、
自分のできることだけで、きみを笑わせてみせるって決めた。
だってね、あの日、お天気雨が虹にあがったから、赤い傘を閉じて空を見上げた。
そうしたら、常盤くんのひとつぶの涙が、わたしのまぶたにそっと落ちたの。
それがわたしの人生の中の最大級の運命ってやつな気がしたから
そう信じてずっとがんばるよ。願いを込めて、その奇跡にすがってみるよ。
「常盤くん、あの、明日のご予定は……」
「土曜日は茉幌といるために空けてるって」
「あ、ありがとう」
「…茉幌、うしろに隠してるのなに?」
「えっと、雑誌のデート特集で、常盤くんの行きたいところを調査しようと、」
「いつもおれの行きたいところじゃん!たまには茉幌を教えてよ」
「で、でも、それだと常盤くんは楽しいのかなあって疑問なんです」
「あのさ。おれだって茉幌と同じだよ」
「同じ、とは?」
きらめく光は、見えた。
わたしが大事にしたいあの運命の先に、
「好きな人と一緒なら、いつでも、どこにいても笑えるよ」
「……っ」
「それより茉幌さ、いつになったら名前で呼んでくれるの?」
何度も、いつまでも、金曜日の次の日にも流星のように尾を引いて。