金曜日はキライ。


「おまえは少しは断るってことをしたほうがいいと思うけど」

「…でもわたしもまかない、アレがいいと思ったの」


だけどわたしはりくちゃんみたいに、自分が食べたいものすら自分の意思じゃ弓くんに頼んだりできない。そういうやつなんだ。

弓くんはちょっと息を吐いたあと「わかったよ」と言った。ぶっきらぼうだけど、作ってくれるらしい。


「ごめんね、弓くん…」


ため息をつかせてしまった。


「何がだよ」

「ううん、なんでもない」

「めんどくせえからはっきり話せよ」

「ご、ごめん」


もう一度謝ると弓くんはいやそうな顔で「あとは俺がやるからいい」と言った。

不機嫌にさせちゃったよ。ごめんなさい。

これ以上弓くんのテンションを下げないように、わたしは素早くそこから退散した。


まかないまで1時間半くらいかあ。


「おかえりまほちゃんーどうだった?」

「あ、りくちゃん。ごめんバレちゃったよ」

「ええ…わたしの頼みじゃダメだったんじゃ…」

「作ってくれるって言ってたよ」


さすがにそう言っておいてちがうもの作るとか、そこまで意地悪なことはしないと思う。

わたしの言葉を聞いてりくちゃんはぱあっと顔色を明るくさせた。


「やったあ、さすがまほちゃん!」


ぎゅうっと抱き着かれそうになったからサッと離れる。お客さんに見えるところでもお構いなしにマイペースを貫く子なんだ。

わはは、と豪快に笑う。変な笑い方だけど、すごく似合ってる。

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