金曜日はキライ。


「弓くん、きっとさ、まほちゃんがわたしに文句言われないように頼み事聞いてくれたんだろうね」


予想もしてない内容だったから、いやいや、と首を横に振る。


「そんなことまでいちいち弓くんは考えてないよ。それにりくちゃんがそんな子だなんて思ってないと思うよ」

「わは、まほちゃん、弓くんのことはわたしのほうがよく理解してるみたいだね」


話しの脈略がいまいち掴めないなあ。

どういう意味か聞きたかったけど、お客さんのお水を足しに行ってしまった。


わたしも仕事に集中しよう。

そう思ってるとお客さんがジョッキを上げてるのを見つけた。「はい」と頑張って声を張ってその席に向かう。


お店は居酒屋だけど、昼間は安めのカフェもやってる。

内観は木を基調した造りで、外観は一軒家。チェーン店の居酒屋ではなくて店長が趣味でお店を出してる感じ。でもわいわいできる雰囲気もあって18時を過ぎるとだんだん混みはじめてきて、19時には満席だったりする。花金の日は予約がいっぱいになるし。


「ビールのおかわりで」

「かしこまりました。他にご注文はございますか?」

「んー、きみ高校生?」

「あ、はい」

「じゃあ一緒にのめないねー。でもちょっと話そうよ」

「男だけで来てさみしかったんだよねー」


わあ、苦手なノリだ。どうしよう。こういう酔った人に絡まれた時はたいてい店長が見つけて来てくれるんだけど、残念ながら今日店長は趣味の山登りのために海外に出かけてしまってる。


「えっと、ごめんなさい、バイト中なので…」

「じゃあバイト終わるまで待ってるよー。何時まで?」

「高校生なら22時とかじゃね?」


う、当たりだ。バイトが終わったら見つからないように帰らないと…。

< 30 / 253 >

この作品をシェア

pagetop