金曜日はキライ。
とりあえずその場は手を離してくれたからそそくさと退散した。いつの間に腕を握られていたんだ。気づかないくらい動揺していた。
情けないなあと思う。町で声をかけられたりしても、ぜんぶ日葵が追い払ってくれる。お店でも誰かが適当にあしらってくれて…そういうのに甘えてきたから自分じゃどうしたらいいのかわかんなくなる。
人と話すのはやっぱり苦手。
「ん~たまごふわふわでおいしい!弓くん調理師になれちゃうよ」
リスみたいに頬袋を両方につくり、もぐもぐした状態でりくちゃんがまかないの感想を言う。
休憩室にはりくちゃんと弓くんとわたしの3人。
弓くんはオムソバではなくただのヤキソバを食べてる。たまごの在庫を配慮してるんだと思う。申し訳ないなあ。
「俺は何でもできるから」
「年下のくせにナマイキだよね。ねえ調理師になってお店出したら食べに行ってあげるよ?」
「ならないし、なってもりくは来ないでほしい」
「なんで!?」
「うるせえから」
ひっどーい!と叫ぶから、店内にまで届いてしまいそうでビクビクした。弓くんも「そういうとこだよ」と深いため息を吐く。
うらやましいくらい元気があるなあ。
「りくと茉幌の性格半分ずつ分けたらけっこーいい感じになるのにな」
的確な言葉にりくちゃんもわたしも「ほうほう」と顔を見合わせる。それは本当にちょうど良さそうだ。
弓くんってぶっきらぼうだけど人のことちゃんと理解してる気がする。まだ出会って数ヶ月しか経ってないのになあ。
「それよりおまえ、さっき絡まれてただろ」
そう言われて思わず箸を止める。