金曜日はキライ。


バイト後、りくちゃんにはお友達のお迎えが来ていた。男の子だ。よく来るけど彼氏じゃなくて親友なんだって。人って不思議だよね。

わたしは男友達ってできたことないからちょっとうらやましかったりする。志保梨ちゃんと常盤くんだって親友まではいかないと思う。とっても仲良しだから友達ではあると思うんだけど。日葵と常盤くんだってそう。中学生の時から、ずっと。



「あ、ほら来た」


出てくる前に店内を見たらもういなかったから帰ったかと思ったのに、さっきの酔っ払い集団は裏口で待ち伏せをしていたみたい。

びっくりして後ずさると、今度こそはっきりと腕を掴まれた感覚がした。


「どこ行くー?」


お酒のにおいがする。けっこう頼んでたもんなあ、この人たち。

人数は3人。スーツを着て、腕を掴む手の首には銀の時計がぶらさがってる。社会人だと思う。


「あの、わたし帰るんで…」


声があまり出ない。聞こえないというかのように顔を覗き込んでくる。

どうしよう。どうしたらいいんだろう。
りくちゃんもいないし日葵もいない。店長も今日はいないし、あとの人はまだ残って仕事をしてた。今助けを呼んだら迷惑がかかる。


『そろそろ自分でなんとかしてみろって思ってたんだよ』

弓くんはそう言った。
わたしだって本当はそうなりたい。
ずっと、そうなりたいと思ってきたの。

でもうまくできなくて…そんな自分が情けなくて。


こわい。でも、ここでどうにかしないともっとこわい目にあうかもしれない。

どうしよう。腕はぜんぜん離れないし、どうしたら───



「おい、その手離せよオッサン」


男の人にしてはちょっと高めの、聞き取りやすい声がした。

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