金曜日はキライ。
ちなみに夏祭りの出し物は射的だったりする。飲食店経営なのに意味わからないよね。店長ってそういう人なんだ。
「茉幌が馴染めてると思えてるなら安心だよ」
わたしって、いろんな人に心配かけてるなあと思う。今日だってお母さんにも心配されたし、昨日弓くんにも心配をかけた。
でもきっとわたしのことを一番心配してくれてるのは、日葵だ。
「楽しんでね、デート」
昨日「わたしと千昂ってどう思う?」なんて聞いてきたけど大丈夫みたい。よかった。…本当に、よかった。
「うん、ありがとう!」
うん、笑ってる。憂鬱な金曜日も、日葵の笑顔を見ると、わたしも笑えた。
それからは主に日葵のかわいいノロケ話を聞いてたけど、学校近くまで来ると常盤くんの後ろ姿が目に入った。
心臓がどくどくと暴れ出す。…いつももう少し遅く来るのに、今日は朝から会えた。…うれしい。
呼べば振り返ってくれそうな距離にいるけど、声はかけられない。
ちらりと日葵を見ると、ちょうど常盤くんを見つけたみたいで、小さく「清雨だ」とつぶやいた。
こういう時、一番後悔する。
「きょうー!おはよー!」
今日のお天気のように晴れやかな声で、日葵が常盤くんの名前を呼ぶ。
茶色い髪が揺れ、そっと振り向いた。
振り向いた時には、もう、常盤くんは名前を呼ぶ準備をしていた。
「ひ──… 駒井、おはよ」
微かに、小さく、「ひ」と口元が動いた。ような気がする。
「いつもより早くない?」
背が小さい日葵は、がんばって足早に常盤くんに追いつく。
それを追いかけるわたしは、本当に、後悔していた。