金曜日はキライ。


ちなみに夏祭りの出し物は射的だったりする。飲食店経営なのに意味わからないよね。店長ってそういう人なんだ。


「茉幌が馴染めてると思えてるなら安心だよ」


わたしって、いろんな人に心配かけてるなあと思う。今日だってお母さんにも心配されたし、昨日弓くんにも心配をかけた。

でもきっとわたしのことを一番心配してくれてるのは、日葵だ。



「楽しんでね、デート」


昨日「わたしと千昂ってどう思う?」なんて聞いてきたけど大丈夫みたい。よかった。…本当に、よかった。


「うん、ありがとう!」


うん、笑ってる。憂鬱な金曜日も、日葵の笑顔を見ると、わたしも笑えた。


それからは主に日葵のかわいいノロケ話を聞いてたけど、学校近くまで来ると常盤くんの後ろ姿が目に入った。

心臓がどくどくと暴れ出す。…いつももう少し遅く来るのに、今日は朝から会えた。…うれしい。

呼べば振り返ってくれそうな距離にいるけど、声はかけられない。

ちらりと日葵を見ると、ちょうど常盤くんを見つけたみたいで、小さく「清雨だ」とつぶやいた。



こういう時、一番後悔する。



「きょうー!おはよー!」


今日のお天気のように晴れやかな声で、日葵が常盤くんの名前を呼ぶ。

茶色い髪が揺れ、そっと振り向いた。

振り向いた時には、もう、常盤くんは名前を呼ぶ準備をしていた。


「ひ──… 駒井、おはよ」



微かに、小さく、「ひ」と口元が動いた。ような気がする。


「いつもより早くない?」


背が小さい日葵は、がんばって足早に常盤くんに追いつく。

それを追いかけるわたしは、本当に、後悔していた。

< 38 / 253 >

この作品をシェア

pagetop