金曜日はキライ。
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たとえば街を歩いてたら急に知らない人から道を尋ねられたり、外国から来た人から日本語の読み方を聞かれたり。
はたまた、別のクラスの人から教科書を貸してほしいと言われたり、年下の子の家庭教師を頼まれたり。
そんな、物事を頼みやすい雰囲気を持ってる人って、この世界にどれくらいの割合でいるのかな。
「やあやあ悪いな、露木」
「いえ……お構いなく」
悪いな、なんて言いつつ、担任で体育教師の深町 和央先生はお疲れらしい首を気だる気にグルリと一回転、いや、二回転させている。
ようするに先生が疲れたから、わたしはわざわざ校内放送で職員室まで呼ばれたわけですね。察しました。
「これはここに名前が書いてある人だけに配ればいいんですよね?」
「そうそう、補習組。露木は頼りになるんだよなあ」
「…ありがとうございます」
本当はきっと、頼りにしてるわけじゃない。頼み事がしやすそうな雰囲気をしてるだけだ。小さいころから、自覚はないけどずっとそうだもの。
だけどわたし、本当はとても方向音痴で記憶力もあまりない。英語は好きだけど勉強途中でうまく話せないし、別のクラスの時間割りの教科書まで持ってるとはかぎらない。
記憶力がないから教えられる教科だって少ないし、先生に校内放送なんてされなければ、今ごろは親友とオープンしたばかりのクレープ屋さんに行くはずだったのに。