金曜日はキライ。


「ぼーっとしてんなよ」

「ひゃっ!!」


ボーリング会場を眺めていたら、頬に痛くくらい冷たい何かが当てられた。飛び跳ねるように席を立つと、弓くんがアホなものを見るような目で見てきた。手にはアイス棒。

冷たくてひりひりしてる。アイスかあ。


「びっくりしたよ…それ食べるの?」

「1ゲーム目負けたから仕方なく。はい」

「え、わたしに?」


橙色のりんご味のアイスみたいだ。差し出されたから誘われるように手に取る。

罰ゲームにアイス、ってりくちゃんは言ってたけど。


「次は勝つから」



そう言い捨てると重ためのハウスボールを持ち、アプローチに沿って助走をつけ、ヘッドピンに向かって投げる。うーん、弓くんってプロ並みにきれいなフォーム。ちょっとおもしろい。


この前バイト先のみんなで行ったボーリング大会で見事弓くんにリベンジできたわたしは、今度は弓くんにリベンジを挑まれた。

そのあとタイミングがなくてなかなかいけなくて1ヶ月経っちゃったけどやっと今リベンジ戦をしてる。


ちなみにバイト先のメンバーとは予定が合わなくてりくちゃんと弓くんと、弓くんと同い年のバイトの祥太郎しょうたろうくんとわたしの4人で来た。でもほとんど弓くんとわたしの勝負になってる。

今のところ1勝1分け1負の成績で引き分け。あと2ゲーム残ってる状態。


ここは譲れないというわけです。

アイスの袋をあけて一口食べると、りくちゃんが「ずっるーい!」と声を荒げた。それと同時にピンが全部倒れた音もする。

< 48 / 253 >

この作品をシェア

pagetop