金曜日はキライ。
「ぼーっとしてんなよ」
「ひゃっ!!」
ボーリング会場を眺めていたら、頬に痛くくらい冷たい何かが当てられた。飛び跳ねるように席を立つと、弓くんがアホなものを見るような目で見てきた。手にはアイス棒。
冷たくてひりひりしてる。アイスかあ。
「びっくりしたよ…それ食べるの?」
「1ゲーム目負けたから仕方なく。はい」
「え、わたしに?」
橙色のりんご味のアイスみたいだ。差し出されたから誘われるように手に取る。
罰ゲームにアイス、ってりくちゃんは言ってたけど。
「次は勝つから」
そう言い捨てると重ためのハウスボールを持ち、アプローチに沿って助走をつけ、ヘッドピンに向かって投げる。うーん、弓くんってプロ並みにきれいなフォーム。ちょっとおもしろい。
この前バイト先のみんなで行ったボーリング大会で見事弓くんにリベンジできたわたしは、今度は弓くんにリベンジを挑まれた。
そのあとタイミングがなくてなかなかいけなくて1ヶ月経っちゃったけどやっと今リベンジ戦をしてる。
ちなみにバイト先のメンバーとは予定が合わなくてりくちゃんと弓くんと、弓くんと同い年のバイトの祥太郎しょうたろうくんとわたしの4人で来た。でもほとんど弓くんとわたしの勝負になってる。
今のところ1勝1分け1負の成績で引き分け。あと2ゲーム残ってる状態。
ここは譲れないというわけです。
アイスの袋をあけて一口食べると、りくちゃんが「ずっるーい!」と声を荒げた。それと同時にピンが全部倒れた音もする。