金曜日はキライ。
「まほちゃんはさ、弓くんのこと好きじゃないの?」
りくちゃんが頬を緩めながら聞いてくる。
わたしは弓くんの姿を目に映した。「何回言えばわかんだよ」なんて言いつつ祥太郎くんに投げ方を教えてあげてる。祥太郎くんの順番が来るたび見てる光景だ。優しい子だなあ。
「好きだよ、もちろん」
「うーん。そっかあ、うんうん」
「なあに」
「いやあ、弓くんもまほちゃんのことが好きだろうなあって思って」
「それならりくちゃんのことだって好きだろうね」
弓くんってスキキライははっきりしてると思うけど、でも厳しいこと言ってけっきょく構ってしまう、そんな子だ。
わたしの言葉にりくちゃんは「わたし、人には好かれる自信しかないもーん」とおちゃらけた声で返事をした。
うん、とってもうらやましい。
りくちゃんだけじゃない。日葵も志保梨ちゃんも千昂くんも、常盤くんだって人を引き付けて、みんなと仲良しで、毎日楽しそうで、金曜日だって楽しそう。
わたしだけが憂鬱で。わたしだけが上手くできない。
そんなふうに思ってしまうけど、そう思う自分がいやなのに、ぜんぜん変われないでいるんだ。
3回目のボーリング対決はわたしが勝った。これで2対1で弓くんはずっと悔しそうにしてた。アイスだけじゃなくて、りんごジュースまでくれたから、ちょっとかわいそうになっちゃった。ありがたくもらったけど。
「いいって、大丈夫だよ弓くん…!」
「アイスとジュースはもらったくせに、こーいう好意は受け取らねえのな」
「だって家反対方向でしょう…この前もバイト帰りも送ってくれたけど、あんまり甘えてばっかいられないよ」
送ってく、と弓くんは言ってくれたけど、悪いし、それにりくちゃんと祥太郎くんの目がにやにやしててなんかいやだ。