金曜日はキライ。
弓くんを見上げると、横顔が夕焼けに染まっていた。今日は天気がいいなあ。さすがに5ゲームしてちょっと腕が痛いよ。隣の彼はそんなことないみたいにすまし顔だけど。
「弓くんって、身長何センチ?」
「174だけど」
「血液型は?」
「B」
「お誕生日は?」
「10月6日」
「好きな季節は?」
「冬」
「あはは、ぜんぶ弓くんっぽいね」
秋生まれも、冬が好きなのも、B型も。すごいや。おもしろい。
「…なに今の」
急な質問責めに何かを疑うような目を向けてくる。
「ええっと、なにって言われるとちょっとうまく言えないけど…なんか気になった」
「意味わかんねえ」
うん、わたしもよくわからない。話題探しみたいな気分だったかもしれないけど。
「おまえのは?」
でも、うん。話題探しは成功したのかもしれない。
質問を返されたことに、ちょっと心が弾む。自分のことを聴いてもらえることってあんまりないから。
「えっと、好きな食べ物はりんごとサーモンとナンカレーです」
「ふつうそこから言わねえだろ」
え、そうなの?自己紹介なんてしたことないからなあ。
「じゃあ弓くん質問してよ」
「…」
あ、ちょっとめんどくさそうな顔した。笑わないくせに、よく顔に出る人だ。
歩きながら待ってみた。けっきょく沈黙じゃん。でもいやな空気はなくって、前から思ってたけど弓くんといるのは、なんだかラクだなあと思う。
こんなに話せる人も、話しかけてくれる人も、めんどくせえなんて面と向かって言ってくれる人も、弓くんくらいしかいないよ。