金曜日はキライ。


弓くんを見上げると、横顔が夕焼けに染まっていた。今日は天気がいいなあ。さすがに5ゲームしてちょっと腕が痛いよ。隣の彼はそんなことないみたいにすまし顔だけど。


「弓くんって、身長何センチ?」

「174だけど」

「血液型は?」

「B」

「お誕生日は?」

「10月6日」

「好きな季節は?」

「冬」

「あはは、ぜんぶ弓くんっぽいね」


秋生まれも、冬が好きなのも、B型も。すごいや。おもしろい。



「…なに今の」


急な質問責めに何かを疑うような目を向けてくる。


「ええっと、なにって言われるとちょっとうまく言えないけど…なんか気になった」

「意味わかんねえ」


うん、わたしもよくわからない。話題探しみたいな気分だったかもしれないけど。


「おまえのは?」


でも、うん。話題探しは成功したのかもしれない。

質問を返されたことに、ちょっと心が弾む。自分のことを聴いてもらえることってあんまりないから。


「えっと、好きな食べ物はりんごとサーモンとナンカレーです」

「ふつうそこから言わねえだろ」


え、そうなの?自己紹介なんてしたことないからなあ。


「じゃあ弓くん質問してよ」

「…」


あ、ちょっとめんどくさそうな顔した。笑わないくせに、よく顔に出る人だ。

歩きながら待ってみた。けっきょく沈黙じゃん。でもいやな空気はなくって、前から思ってたけど弓くんといるのは、なんだかラクだなあと思う。

こんなに話せる人も、話しかけてくれる人も、めんどくせえなんて面と向かって言ってくれる人も、弓くんくらいしかいないよ。

< 52 / 253 >

この作品をシェア

pagetop