金曜日はキライ。
10月6日の誕生石はアメトリンかあ。これもすっごく弓くんらしい。雨の粒を閉じ込めたような、綺麗な半透明のむらさき色。
プレゼントしたいなあ、お世話になりっぱなしだし。なんて気の早いことを考える。弓くんは石なんて興味ないかもしれないけど、もらったものは大事にしてくれると思うんだ。
川沿いのスペースで少年野球チームが試合をしてるのを見ながら歩く。
「野球好きなの意外だよな」
弓くんがぽそりとつぶやく。
なんで知ってるの、という目で見ると、ちょっと笑った。思い出し笑いをしてるみたいな表情だった。
「店のテレビでよく見てるだろ」
「バ、バレてる…」
「サボんなよ」
店内の天井に設置された小さな液晶テレビ。視力はいいからよく見えて、野球がついてると見入ってしまう。好きなチームは特にないけど、ショートのポジションが一番好きだなあ。かっこいい。
スラッガーは頼もしいし、ピッチャーは繊細ながらも力強い。彼らを支え、勝つためにグローブをはめたナインがダイヤモンドを囲む。ベンチからの声。コーチャーからの指示。あちこちから飛び交う大きな期待と攻めを一心に受け止める選手たちがまぶしい。
スポーツはぜんぶ好きだけど、自分が不得意だからって今まで知ろうとしてこなかったことがはずかしくなるくらい、野球っておもしろいんだ。
くくっと、笑い声が聞こえた。
「ど、どうしたの?」
めずらしいこともあるもんだなあ。弓くんが声を出して笑うなんて。
「いや、野球見てる時の茉幌の顔思い出して…くくくっ…」
「え、ちょっとなに、そんな変な顔してる!?」
たらーっと背中が寒くなる。ぜったい、変な顔してたんだ…だって弓くんがこんなふうに笑ったこと、出会ってから一回もなかったもん。