金曜日はキライ。


引き笑いまで初披露してる。この場にりくちゃんがいたら写真大会になってたに違いない。わたしも今カメラを向けたくて向けたくてしょうがないよ。怒られるからしないけど、激レアすぎる。

…さっぱりと笑うひとだなあ。

初めてバイトに来た時は「説明が遅い」「わかりにくい」「もっと効率よく…こうするだろふつう」なんて睨まれたりもしたのに、すごい進歩。仲良くなれてるってことでいいのかな。


でもさすがにそんなに笑われたらショック!


「あんまり見ないでよ…せめて見てないふりしてよ…」

「やだね」

「そこ断る?はずかしすぎてもう店で野球見れなくなっちゃうじゃん」

「それは困る」

「なんで、」

「おもしろいから、これからも見たい」


ぬう…。こっちからしたらかなり嫌だけど、こんなに笑ってもらえるならいいかなって思っちゃう。

それに、おもしろいなんて言われたの、初めてだった。


「そもそもスポーツ得意なのが意外すぎ」

「よく言われますー」

「だろうな」

「く…弓くんって生意気だよね」


それより質問はこないのかな。自己紹介したことなかったから楽しみに待ってるんだけど…弓くん…?


「楽しいだろ、俺といると」

「…どっからくるのその自信」


自信満々な笑みを向けられると、なんだかシャクな気持ちになって素直な言葉がでない。

でも、そういうのも、こういう気分も、初めて知った。


「茉幌の顔見てたらわかるよ」


そっか、わたしも顔に出ちゃうタイプなんだね、気を付けないといけないなあ。

弓くんの言う通りだよ。

去年より、ずっとバイトが楽しいの。
誰のおかげかなんて、考えなくてもよくわかってる。

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