金曜日はキライ。
楽しい帰り道だった。
いつも思う。厳しいことを言うくせに、弓くんは優しくて、となりにいてくれると心強い。とても居心地がいいなあって。
「家までありがとうね、弓くん」
「おー」
「あの、またボウリングしようね」
「次は勝つけど」
あ、悔しそうな顔。ポーカーフェースが今日はよく崩れるなあ。
ありがとう、ともう一度言うと、頷いた弓くんは背を向けた。
しばらく見送ってると、ふいに黒髪が揺れる。振り向いた弓くんがこっちにつま先を向けて引き返してくるのが見えた。
「弓くん?」
「ひとつ、質問」
「え、」
やっと質問がきた。そう思って、8月の誕生日もO型も好きな教科も用意した。でも言葉の続きは、そのどれも必要なかった。
「好きなやつ、学校一緒?」
「…へ……」
突然な問いかけに目を見開く。
「いるんだろ。なんとなくわかる」
「ええ…なんでわかるの…?」
志保梨ちゃんにはバレちゃったけど、誰にも秘密にしてるのに。
弓くんはバイト先の人だからまだいいけど、でも、もしもわたしがわかりやすいのであれば改善しなきゃいけない。
わたしは、バレたくない。知られたくない、誰にも。
「だから、なんとなくだって。で、質問の答えは」
「あ、えっと、…うん」
なんとなくって。弓くんってすごい人かもしれない。なんとなくでわかるって。
太陽はもう沈んでいて、そろそろ星が出る時間になっていた。この時間まで引き留めちゃさすがに悪いと思って、もう帰ろうと言おうとした。
「俺も、おまえのところ受けたらよかった」
だけど言えなかった。まさかそんなことを言われるなんて思わなくて、言葉に詰まる。なんて答えるのが一番いいのか、見つからない。