金曜日はキライ。


常盤くんの瞳がちょっと大きく開いた。


「おれと変わんないじゃん」

「2日後だよね」


そう言ってからはっとした。何で知ってるのか聞かれたらうまく答えられる気がしない。

そんな心配もつゆ知らず、彼は「知っててくれてるんだー」と微笑んだ。


「じゃあさ、間をとって15日にお祝いしよーよ」

「えっ」

「夏休みだけど空けといてね」

「ええっ…」


夏休みは、去年に続いて、常盤くんに会えない地獄の毎日が続くと思ってたのに…誕生日を祝おうって、そんなことってある?夢かな、と思って頬を抓ってみたけどとっても痛かった。


「何してんの露木、赤くなってるよ」

「あ、えっと…常盤くん、彼女とかできちゃうご予定はないのですか…」

「ないない。あ、露木はある?」

「な、ないです!」


だって付き合いたいのは常盤くんしかいないもん。でも、そんなこと絶対に起きないから、ないよ、そんな予定。

だけど常盤くんは違うじゃん。よく告白されることも、常盤くんを好きっていう子がいることも、知ってるんだよ。


「本当に?ならよかった。じゃあいいよね。バイト入れちゃダメだよ」


それなのに、わたしに夏休みの1日をくれるんだって。こんなに幸せでいいのかな…。

全然楽しみじゃなかった夏休みが、一気に色を変える。去年はおめでとうさえ言えなかった誕生日がお祝いできるなんて、泣いてしまいそうなくらいうれしい。


「常盤くん、何がほしい?」

「え?うーん。なんもいらないよ。露木は?」

「わたしも、なんにもいらない」


一緒にいてくれるだけで充分だった。胸がいっぱいだよ、どうしよう。

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