金曜日はキライ。


15日まではなんとしても生きなければ、とへんてこな誓いを胸にたてる。


「じゃあ連絡先教えて」

「…へ……」


愕くわたしをよそに携帯を取り出して操作し始める。はっとして、すぐに携帯を出した。

なにが起きているのか、頭が追い付かない。


「はい、これ読み取れる?」

「あ、うん」


携帯って便利だ…。こんな簡単に繋がれてしまうなんて。

ぽこんという音とともに、キョウ、という名前と虹を映した空のアイコンが出てきて、心臓が爆発するかと思った。これは本当に自分の携帯なのかな。


「なんか送っといて」

「は、はい」

「これならいいや。また雑用押し付けられた時とかも呼んでくれていいしさ」

「や、そんなことはできないよっ」

「おれがいいって言ってんだからいいの」

「ぬう…」


とりあえず、お気に入りのゆるきゃらスタンプを送ってみる。ちらりと見ると、画面を見て吹き出すように笑う表情があった。


「“ふつつかものですがよろしく”って…ははっ、全然ふつつかじゃねー」


笑ってる。

常盤くんが、わたしの気に入ってるスタンプを見て笑ってる。誕生日覚えてるのもうれしそうだった。さっきから、わたしの言葉ひとつひとつに反応してくれる。

こんな幸せだったことない。こんなにうれしいことって、他にない。


「常盤くん」

「ん?」

「…ありがとう」

「なにが?」


その問いかけに首を横に振る。
幸せだったけど、その理由を伝えようとは思わない。

ただ、ありがとうだけは言いたくなった。常盤くん、きみが好き。とても好き。


「あれ、露木のアイコンも虹だね」

「あ…」

「虹なー…」


常盤くんの目が、窓の外を見上げた。

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