金曜日はキライ。
そこには、くもり空が広がってる。梅雨明けの予報はまだでてない。
「あの日の雨は、虹にあがったよな」
ひとり言のように、ちいさな声だった。
あの日のことを常盤くんと話すのは、初めてだったから戸惑った。
なみだを、見てしまった日。
常盤くんとわたしが共有している、唯一の時間。
だから「あの日」があの日のことを差してることはすぐに分かった。
空を見つめる瞳はあの日と同じように、何の色も映っていないような気がした。
あの日虹はたしかにかかっていた。
でもきっと常盤くんはあの虹の色を覚えてないだろう。わたしも、よく覚えてない。
「…お天気雨だったもんね」
常盤くんが今思ってることがなんとなくわかる。
「うん」
なんでかなあ。わかってしまうんだ。
何色も映っていない瞳。
その奥でいつも抱えているもの。
「よしプリントこれでラストー」
そんな言葉に、あわてて四つ角が揃える音を耳にやきつける。
「いつもより早く終われたよ。ありがとうね」
「本当?よかった。配るか」
奇跡みたいな時間だったけど、とうとう終わってしまった。
できればずっとこうしていたかった。なんて、そんなことを思っているのを悟られないように束ねたプリントを持って立ち上がる。
「あの、英語苦手なのにどうして選択したの?」
「う。露木ってたまにグサッとする」
「えっ、ごめんなさいっ」