金曜日はキライ。



「なんで無理すんのー。わたしが言ったのに」


帰り道、バイトに向かう途中で日葵に怒られてしまった。


「ごめんね、せっかく言ってくれたのに。でもまた決め直しになっちゃいそうだったから…」

「だからって茉幌が我慢しなきゃいけない理由にならないでしょ」


その言葉にきゅっとくちびるを結ぶ。
そう言ってくれるのはうれしいけど、どう考えてもわたしが悪かったよ。


「みんなが決め始めてる時、意見言えなかったのは自分の責任だから…ソフトでも、ちゃんとがんばるよ」


水差すようなことできない。せっかくみんな楽しみにしてるのに、できないなんて言えない。

日葵はもやもやしているのか「あの決め方に文句言えばよかった!」とむっとした表情をしていた。こういうところが優しいなあと思う。


バイトまでまだ時間があったから念願の日葵のバイト先に行くと、本なんて似合わないりくちゃんの姿があった。


「あれえまほちゃんだ!」

「りくちゃん、どうして本屋にいるの?」

「ちょっとまほちゃんどういう意味?わたしが本屋にいたら変?似合わない?ねえ」


じりじりと詰め寄ってくるけど、一つ年上なのに全然こわくない。思うがまま自然と頷いてしまった。


「ちょっとひどい!そりゃまほちゃんは本がぴったりだけど、わたしだって読書ガールになったりするんだからねっ」

「たまにだろ」

「ちょっと、うるさい!おだまり親友っ」


りくちゃんが本を読むところなんて想像できないや。あとで弓くんに報告しちゃおう。きっとおもしろいことになる。


それより、あのおすすめの本を紹介してくれたりする店員さんがりくちゃんの「うわさの男友達」だったなんておどろきだ。世間ってせまいなあ。


< 93 / 253 >

この作品をシェア

pagetop