金曜日はキライ。


偶然の重なりに笑みがこぼれる。お互いの親友が同じ場所で働いてるなんてすごいね、なんて楽しそうに話した。なんだかうれしい。


「あのう。引っ込み思案な茉幌ですがよろしくお願いします」

「ちょ、日葵恥ずかしいよっ」


りくちゃんに深々お辞儀をしだした親友を慌てて止める。親が子供を送り出すみたいな光景が気恥しい。


「ええ、まほちゃんって引っ込み思案だったの?ぜんぜんそんな感じしないよね。弓くんにも怖気づかないしさ」

「弓くんは、こわくないよ」

「でもぶっあいそうだしさー、目つきも悪いし、言葉遣いもわるいしー。かわいいけどー」


たしかにそうだけど、初めから、優しい雰囲気は持ってた。笑顔はなくても、たとえば、わたしの説明がわかりにくいって指摘しても、そのあと「ありがとう」と言ってくれたり。

そもそもうまく説明できなかった自分がわるかったりするから、そういうことに、弓くんといると気付けるんだ。


「とにかく、まほちゃんは心配なくダイジョーブですよ!」


明るく答えたりくちゃんに反比例するみたいに、日葵は顔に、千昂くんがいたら怒られちゃいそうな表情を浮かべていた。


「日葵、ありがとうね。なんかあったら相談させてね」

「…もー。絶対だよ」


それに頷くと、やっと笑ってくれた。


りくちゃんの親友くんにおすすめしてもらった文庫本を2冊買って本屋さんを出た。

バイト先はすぐ近くだけど日葵との帰りの時間はいつもバラバラ。りくちゃんは、金曜日はよく時間を合わせて夜は一緒に過ごしてるんだって。それでいて親友なんだから、人と人って不思議だなあって思う。

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