Don't let me go, Prince!
私達がお互いに欲しいのはきっとお金じゃ手に入れられない。でもこれからの私達ならきっと手に入れる事が出来るはずのモノ。
「絶対に後悔しないなんてことは無理かもしれませんが、私達はそうならないように二人で協力し合っていけます。弥生さんが欲しがっているモノは私が与えてあげれると思いますし、私が欲しいモノは弥生さんしか与えられない。お金では、買えないものなんです。」
「渚、貴女は本当に……」
弥生さんが強く私の手を握り返してくれる。彼も同じ気持ちだと分かっていっそう心強くなる。私達の考えは、間違っていないはず。
「お前の嫁はこう言っているが、本当にそれでいいのか弥生?」
私が勝手に意見したのは良くなかったと思うけれど、弥生さんの気持ちを考えないお義父さんの発言に我慢が出来なかった。
お義父さんは今度は弥生さんとしっかり目を合わせてから彼にもう一度確認する。
「構いません。渚がいれば私は今以上に頑張る事が出来ますから。」
弥生さんもお父さんから目を逸らさずにしっかりと答える。弥生さんの言うように、私が彼を支える存在になれるようにこれから頑張らなくては。
「良いんじゃないですか?僕も何を考えてるか分からない兄と二人で仕事をするのは窮屈だと思っていましたし。ねえ、お母さんもそう思いますよね?」
「……そうね。弥生さんが望んでいないのなら無理にとは言えないわ。他の人が補佐でも神無は大丈夫なはずです。」
今まで口を開かなかった神無さんがニコニコと美津代さんに同意を求めている。美津代さんも神無さんと同じ意見のようで、神無さんなら大丈夫だと微笑んだ。
「神無、お前まで……お前が一番弥生と仕事をしたがっていただろう?」
「そんなのはお父さんの思い込みでしょう?弥生兄さんと仕事をしたいなんて、僕は一度も思った事はありませんよ。」
感情の読めない瞳のまま、神無さんはお義父さんにそうハッキリ伝える。もしかして神無さんは弥生さんの為にわざと嘘をついているのかもしれない。
だって神無さんはさっきから美津代さん以外の誰とも目を合わそうとしないもの。
「神無……」
弥生さんも神無さんの嘘に気付いているようで、神無さんの事を静かに見つめている。
この二人は隠してるけれど、とてもお互いの事を大切に思っているのかもしれない。