Don't let me go, Prince!
「お前達の気持ちは理解出来たつもりだ。しかし、本当にお前はいつも俺の事を頼ろうとはしないのだな……それも俺の所為なんだろうが。」
さっきまで刺々しい様子のお義父さんだったが、弥生さんの考えが変わらないことと、神無さんがそれを後押ししようとしている事を理解したようで静かに頷いた。
お義父さんにも弥生さんに対して後悔していることがあるのか、もしかしたら自分たちの傍に置く事でその償いもしたかったのかもしれない。
「お父さんの、その気持ちだけで嬉しいですよ。ありがとうございます。」
弥生さんは深く頭を下げて、礼を言う。私も弥生さんと同じように頭を下げると、お義父さんは「もういい」とだけ言って部屋から出て行ってしまった。
「お義父さん、怒ってしまったのかしら?私がカッとなって余計な口出しをしてしまったから……」
「いいえ、渚が私の事で怒ってくれてとても嬉しかったです。父もきっとそれを分かってくれているはずです。」
弥生さんはそう言ってくれるけれど、これで二人の関係が悪くなってしまわないか心配だった。
「渚さんが息子をかばってくれるいい嫁だという事はあの人のちゃんと分かってますよ。今は思い通りにならなくて拗ねているけれど、すぐにあの人の方から連絡したがるでしょうよ。」
美津代さんが楽しそうにクスクスと笑いながら、お義父さんが出て行ったドアを見つめてる。長い時間お義父さんと一緒に暮らしている美津代さんが言うのならば、大丈夫なのかもしれない。
「別に兄さんたちに何かあれば僕を通してくれればいいんだしね。ああ、そうだ……渚ちゃんにも僕の番号を教えておくね?」
そう言って神無さんがくれたのは、彼の名刺。彼の会社名と役職、それに携帯番号を手書きで書いてくれる。
「神無さん。こんなの渡したら、本当に何かあったら私は頼っちゃうかもよ?」