Don't let me go, Prince!
「あのさ、ここには一応僕もいるって事を忘れてない?二人共、イチャつくのは帰ってからにしたら?」
神無さんの呆れたような声を聞いて、私はゆっくりと弥生さんから手を離す。本当はまだ繋いでいたかったけれど……
ちょっとだけ今神無さんがいなかったら良かったな、なんて思ってしまった。
「いま、僕の事が邪魔だなって思ったでしょ?渚ちゃんって結構思っていることが顔に出やすいね。」
「そんなこと……ちょっとだけ思いました。ごめんなさい。」
「そんなことない」と言おうと思ったけれど、嘘をついてもきっとバレてしまうと思いすぐに謝った。
神無さんはかなり鋭い男性だと思う。いつもニコニコしているけれども、よく人を見ているのよね。
「へえ、素直に謝るんだね。ちゃんと謝れたから、ご褒美を上げなきゃね……兄さん、手を出して?」
「私?何なのですか。」
神無さんは私にご褒美を、と言いながら弥生さんに何かを手渡している。弥生さんの手に何かを握らせた後で、神無さんは弥生さんの耳元で何かを囁いてから離れた。
私がその様子をボケっと見ていると、神無さんはこちらを見てニコリと微笑んだ。ねえ、意味が分からないわ。
「僕の相談相手になってくれる渚ちゃんに、少しだけ良いことがあるといいね?……さて、僕はそろそろ戻るよ、2人とも気を付けて帰ってね。」
神無さんは少し照れ臭いようで、私達から目を逸らしてしまう。やっぱり弥生さんと同じように彼も優しい人だ。
「神無さん、私で力になれることがあったらいつでも言って欲しい。私達は貴方の家族なのだから。」
神無さんが嫌だと言っても、私と弥生さんは神無さんの事を大切な存在だと思ってる。
彼が辛い時は、あまり力になれなくてもこの手を差し伸べたい。