Don't let me go, Prince!
「そう言う事言わないでよ、本当に頼りたくなっちゃうから……もう、僕は行くね。」
遠慮しないでほしい、私も弥生さんも神無さんに頼ってもらいたいのに。きっと神無さんは誰かに頼る事に慣れていないのでしょうね。
弥生さんも神無さんも二人とも、何でも自分一人で解決しようと頑張りすぎなのよ。
こちらを振り向くことなく、家の中へと入って行った神無さんを弥生さんと二人でじっと見ていた。
「神無はあんな態度しかとりませんが、きっと渚に感謝していると思います。今日は付いて来てくれて本当にありがとうございました。」
「夫が実家に帰るのに同行しただけでしょう、お礼を言われるような事じゃないわ。神無さんの事だって私が勝手にお節介やいているだけよ。」
弥生さんの役に立てたのならば、付いて来て良かったわ。カッとなってお義父さんに勝手に意見してしまったりもしたけれど。
……弥生さんはそんな私の事の行動を嬉しいと言ってくれた。
「神無も行ってしまいましたし、車に乗りましょうか。少しお腹が空いたので食事をしに行きましょう?」
「ええ、実は私もお腹が空いて来てしまって……いいお店はあるかしら?」
「……そうですね。」
弥生さんは少し何かを考えるそぶりを見せた後、運転席のドアを開ける。私も助手席に乗り込みシートベルトを付けて、弥生さんがカーナビを操作しているのを黙ってみている。
エンジンをかけて走り出した車、目的地まで私達は他愛ない会話を楽しんだ。
弥生さんの連れて来てくれたお店はお洒落な創作フレンチのお店でお料理はとても美味しかった。
こんな可愛いお店、弥生さんは誰かときたことがあるのかしら?馬鹿ね、弥生さんの過去に嫉妬したって仕方ないのに……
「渚はつかれていませんか。もし渚がまだ大丈夫ならば、少し寄り道をして帰ってもいいですか?」
お店を出て車に乗り込んだ私に弥生さんが優しく声を掛けてくれる。
今これだけ大事にしてもらってるのだから、過去の事にヤキモチを妬くのは止めなきゃね。