Don't let me go, Prince!
「神無さんが?それじゃあさっきのお店を選んだのも神無さんなの?」
弥生さんが選んだにしては確確か随分可愛らしいお店だと思ったけれど、女性の扱いが上手そうな神無さんだと言われると納得出来る。
「そうです。私は神無のように女性が喜ぶようなことはしてあげられなくて……こんな私に渚もガッカリするのではないかと思うと、言い出せなくて。」
弥生さんは申し訳なさそうにそう言うけれど、私は貴方にガッカリなんてしないわよ?ガッカリされるかもって思いながらも、弥生さんは素直に言わずにはいられなかったんでしょう?
「私ね、正直な気持ちを言うと少しだけホッとしたの。」
「渚はホッとしたのですか……?どうしてです?」
私の返事に不思議そうな顔をする弥生さん。そんな顔を見られるようになったのも私たちの関係がとても良くなったからなのよね。
「あのお店……過去に弥生さんが他の女性と来た事があるんじゃないかって、そんな事を考えて不安になっていたの。でも弥生さんも初めてのお店だったって分かってホッとしてる。」
「渚はそんな事で不安になるのですか?私は渚の事をちゃんと理解出来ていなかったのですね……」
そうよ。そんな事でもヤキモチ妬くのよ、私は。カッコ悪いからそれを弥生さんにバレないように隠しているだけなの。
「この景色も、弥生さんは私と見るのが初めてなんでしょう?それだって私は嬉しかったりするの。」
私は夜景に向かって大きく手を広げる。ここにはあまり人がいないから少しくらいはしゃいだって誰も気にしない。
弥生さんが初めて見るこの場所の夜景、一緒に見るのはこの私なの。こうやって少しずつ二人で色んな事をやっていきたい。
「そうですね、私も渚とこの夜景を見れて嬉しいです。神無に感謝しなくては。」